「籠の花」には、大きく分けて二つの意味があります。一つは葬儀に用いられる花、もう一つは茶道で用いられる花入れです。
どちらも、籠と花が組み合わさることで、独特の美しさや意味合いを持つようになります。

葬儀における籠の花

葬儀に用いられる籠の花は、故人の冥福を祈りと、遺族への慰めの気持ちを表すために贈る供花の一種です。 一般的に、細く割った竹で編んだ球状の籠に、白菊やユリ、カーネーションといった花をアレンジして作られます。 これは祭壇の両脇などに飾られ、 葬儀の場を厳かに彩ります。

この籠の花は、仏教の散華の儀式に由来するとも考えられています。
散華とは、仏を供養するために花を撒く儀式のことで、籠の花を振って小銭を撒く風習も、この散華になぞらえたものだと言われています。
また、撒かれた小銭を拾うことで、故人の長寿にあやかれるという意味もあるようです。

さ地域によっては葬儀の際に花籠を墓地まで持ち運んだり、墓に立てたりする風習もあります。
これらの風習は、花籠が故人の霊を慰め、鎮魂するための役割を担っていることを示唆しています。 

茶道における籠の花

茶道における籠の花は、茶席に飾る花を生ける花入れの一種です。
竹や藤などを編んで作られた籠が用いられ、 床の間に置く「置き花入」、壁にかける「掛け花入」、天井からつり下げる「つり花入」など、様々な種類があります。

籠花入れは、大きく唐物籠と和物籠に分けられます。 唐物籠は、室町時代に中国から伝わったもので、精巧な編み方が特徴です。
一方、和物籠は、千利休の茶道が完成する頃に日本で独自に発展したものです。
利休は、鉈を収める鞘を模した鉈籠や、漁師が使う魚籠を模した桂籠など、 身近にあるものを花入れとして用いることで、わびさびの精神を表現しました。

籠花入れは、その軽やかで涼しげな姿から、風炉の時期(5月~10月)によく使われます。

籠の花の語源・由来

葬儀に用いられる籠の花の語源や由来は、文献からは明確にはわかりません。
しかし、宮城県や福島県の一部地域では、葬儀の際に花籠を墓地まで持ち運ぶ、墓に立てるといった風習があり、花籠が鎮魂や、死者の霊を慰めるための宗教的な意味を持つものである可能性が示唆されています。

一方、茶道における籠の花、特に和物籠は、利休が既存の籠を花入れとして用いたことが始まりとされています。
利休は、鉈を収める鞘や漁夫の魚籠など、 身近なものに美を見出し、茶道の精神と結びつけました。

籠の花の用例

文学作品・芸術作品における籠の花

籠の花は、古くから文学作品や芸術作品にも登場します。
例えば、 では、夏草を籠に活けるアレンジの例が紹介されています。ゴンスケ、キキョウ、リンドウといった草花を籠に生けることで、涼しげな夏の情景が表現されています。
また、松尾芭蕉の俳句「螢籠 昏ければ 揺り炎えたたす」が挙げられています。
この句は、蛍籠の中で蛍が光を揺らめかせる様子を、夏の夜の幻想的な美しさとして表現しており、籠と花、そして光が織りなす幽玄な世界が目に浮かびます。 

現代における籠の花の解釈・用例

現代においても、籠の花は様々な解釈や用例があります。
現代のファッションデザイナーである黒河内真衣子が、江戸時代中期に活躍した竹工芸家・飯塚琅玕斎の花籠からインスピレーションを得て、作品を制作したことが紹介されています。
これは、伝統的な花籠が現代の芸術にも影響を与えていることを示す好例と言えるでしょう。

また、 葬儀における花籠の風習について、地域によって異なる解釈や用例があります。
例えば、花籠を振って小銭を撒く行為は、長寿にあやかろうとする地域や、にぎやかしのために行う地域など、様々です。
また、三重県鳥羽市坂手町では、故人の年齢と同じ数の銭を花籠に入れて葬送の途中で撒く風習があり、撒かれた銭を拾うことは「まいりにゆく」と呼ばれ、特別な宗教的意味合いを持つと考えられています。

籠の花と似た意味を持つ言葉や表現

籠の花と似た意味を持つ言葉としては、花籠(はなかご)花筐(はながたみ)散華籠(さんげかご)、華筥(けこ)などがあります。
これらの言葉は、いずれも花を盛るための籠を指しますが、それぞれ微妙なニュアンスの違いがあります。
例えば、「花筐」は主に草花を摘み入れたりする際に用いる籠を指し、「散華籠」は法要の際に散華を入れる籠を指します。 

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まとめ

籠の花は、葬儀や茶道など、日本の伝統文化と深く結びついた言葉です。
時代や地域、文脈によって様々な意味や解釈を持ち、現代においても、芸術作品や生活の中にその姿を見ることができます。

葬儀においては、故人の冥福を祈り、霊を慰めるための供花として、また、茶道においては、わびさびの精神を表す花入れとして、籠の花は重要な役割を担ってきました。
現代においても、伝統的な技術を継承するだけでなく、新しい解釈や表現を取り入れながら、籠の花は進化し続けています。

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