アントルメ

「アントルメ(entremets)」とは、フランス料理のコースにおいて、本来はメインディッシュの後、デザートの前に提供されていた料理 を指します。

アントルメとは?

現在では、その意味合いが変化し、主に以下2つの意味で使われています。

  1. 本来の意味
    肉料理などのメインディッシュの後、デザート(デセール)の前に提供される、野菜料理や、甘い料理。
  2. 現代的な意味
    ホールサイズのデコレーションケーキ、または ムースや、ババロアなどを、複数のパーツで構成した、冷菓

補足説明

  • 本来の意味では、「アントルメ」は、必ずしも甘いものとは、限りませんでした。
    しかし、コースの流れの中で、チーズや、フルーツ、冷菓などを提供することが多くなり、徐々に、甘いものというイメージが、定着していきました。
  • 日本では、特にパティスリー業界で、「アントルメ」は「ホールサイズのデコレーションケーキ」を指すことが多く、この意味で広く使われています。

「アントルメ」の語源

「アントルメ(entremets)」の語源は、フランス語の”entre”(~の間に)と”mets”(料理)を組み合わせた言葉です。
直訳すると「料理と料理の間に出すもの」という意味になり、コース料理の間に提供される料理を指していました。

「アントルメ」の歴史

「アントルメ」の歴史は古く、中世ヨーロッパの宮廷料理に遡ります。
当時は、塩味の料理とロースト料理の間に、余興として、「アントルメ」が提供されていました。
その後、「アントルメ」は、コース料理の中で、重要な役割を担うようになり、様々な種類の料理が作られるようになりました。
19世紀頃になると、甘い「アントルメ」が、一般的になり、コースの最後を飾るデザートへと変化していきました。

現代フランス料理のコース構成と「アントルメ」

現代のフランス料理のコースでは、「アントルメ」は以下のような位置づけになります。

  1. アミューズ・ブーシュ (amuse-bouche)
  2. オードブル (Hors-d’œuvre) / 前菜
  3. ポタージュ (potage) / スープ
  4. ポワソン (poisson) / 魚料理
  5. ソルベ (sorbet) / お口直しの氷菓
  6. ヴィアンド (viande) / 肉料理
  7. アントルメ (entremets) / 甘味、チーズ、野菜料理など
  8. デセール (dessert) / デザート
  9. カフェ、ミニャルディーズ (mignardises) / コーヒー、小菓子

しかし近年では、7番目の「アントルメ」を省略し、肉料理の後に、8番目の「デセール」を供するスタイルも増えています。

パティスリー業界での「アントルメ」

パティスリー業界では、「アントルメ」は、「ホールサイズのデコレーションケーキ」、または 「複数のパーツで構成された、ムースや、ババロアなどの冷菓」 を指すことが一般的です。

  • ホールケーキとしてのアントルメ
    誕生日や、クリスマスなどのイベントで、よく用いられる、切り分ける前の、デコレーションケーキを指します。
  • 複数のパーツから構成される冷菓としてのアントルメ
    ビスキュイ、ムース、クレーム、フルーツのコンポート、ゼリーなどの様々なパーツを組み合わせ、複雑な味わいと食感、見た目の美しさを表現した、技巧を凝らした、冷たいデザートを指します。

「アントルメ」の使用例

  • 「クリスマス用に、アントルメを予約した」
    クリスマス用に、ホールサイズのデコレーションケーキを予約したことを伝える。

  • 「このアントルメ、何層にもなっていて、手が込んでいるね」
    複数のパーツで構成された、冷菓について、その複雑な構造を表現する。

  • 「パティシエの専門学校では、アントルメ作りの実習がある」
    製菓の専門学校では、ホールケーキや、複数のパーツで構成された、冷菓作りの実習があることを説明する。

  • 「彼は、アントルメ・グラッセ(アイスクリームケーキ)のコンテストで優勝した」
    彼が、冷たいデコレーションケーキのコンテストで、優勝したことを伝える。

  • 「今日は、アントルメを仕上げるところまで終わらせよう」
    今日は、デコレーションケーキを仕上げる段階まで、作業を進めることを伝える。

  • 「このレストランのアントルメは、芸術品のように美しい」
    そのレストランで提供される、アントルメ(ここでは、コースの途中で出される料理)の、見た目の美しさを表現する。

「アントルメ」と関連する用語

  • アントルメグラッセ (entremets glacé)
    アイスクリームや、シャーベットを使ったデコレーションケーキ。
  • プティガトー (petit gâteau)
    一人前サイズの小さなケーキ。
  • グランガトー (grand gâteau)
    大型のケーキ、または、切り分けて提供されるケーキ。
タクヤ
「アントルメ」とは、フランス料理のコースの流れの中で、変遷してきた言葉であり、本来は、メインディッシュとデザートの間に提供される料理を指していました。
しかし、現在では、主に「ホールサイズのデコレーションケーキ」や、「複数のパーツで構成された、ムースや、ババロアなどの冷菓」を指す言葉として使われています。
特に、パティスリー業界では、後者の意味で使われることが多く高度な技術を要するデザートの一つのジャンルとして確立しています。
この解説が、「アントルメ」についての理解を深める助けになれば幸いです。

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