「クロマキー(Chroma Key)」とは、特定の色の成分を、別の映像に置き換える映像合成技術 のことです。
主に、青色や緑色の背景の前で人物や物体を撮影し、その背景部分を、別の映像と合成する ために使われます。 「クロマ」は「色彩」、「キー」は「信号」を意味します。
クロマキーの原理
クロマキー合成は、以下の原理に基づいて行われます。
- 特定の色(主に青や緑)を背景にして、人物や物体を撮影します。
- 映像信号から、特定の色(キーカラー)の成分を抽出します。
- 抽出した部分(背景部分)を透明にします。
- 透明になった部分に、別の映像をはめ込みます。
クロマキーで青や緑が使われる理由
クロマキー合成で、背景に青色や緑色がよく使われる理由は、以下の通りです。
- 人間の肌の色と補色の関係にあるため、人物をきれいに切り抜きやすい。
- 自然界に少ない色であり、被写体と被りにくい。
- デジタルカメラの撮像素子(イメージセンサー)が、緑色に対して高い感度を持つため、技術的に処理しやすい。
「ブルーバック」と「グリーンバック」
クロマキー合成で使用される、青色の背景を「ブルーバック」、緑色の背景を「グリーンバック」と呼びます。 どちらを使うかは、被写体の色や、撮影環境などによって決められます。
- ブルーバック
古くから使われている手法で、特にフィルム撮影で多く用いられてきました。 - グリーンバック
デジタル合成に適しており、現在の主流となっています。デジタルカメラの特性から、緑色の方が、よりきれいにキーイング処理(背景を透明にする処理)ができます。
「クロマキー」の用途
クロマキーは、テレビ業界で以下のような様々な用途で使われています。
- 天気予報
天気図を背景に、キャスターが予報を伝える。 - ニュース番組
スタジオにいながら、世界各地の映像を背景に、ニュースを伝える。 - バーチャルスタジオ
実際のセットがない、仮想空間のスタジオで、番組を収録する。 - 映画・ドラマ
現実には存在しない場所や、危険な場所でのシーンを撮影する。 - CM
商品やタレントを、印象的な背景と合成する。 - ミュージックビデオ
アーティストを、幻想的な世界観の背景と合成する。
「クロマキー」の使用例
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「明日の天気予報、クロマキーで撮影するから、青い服は避けてね」
クロマキー合成では、背景と同じ色の服を着ると、その部分も透明になってしまうため、注意を促す。 -
「このシーンは、クロマキーで恐竜を合成する予定です」
撮影した映像に、クロマキー合成で恐竜のCGを合成する予定であることを説明する。 -
「クロマキーの抜けが悪いから、照明を調整して」
クロマキー合成で、背景がうまく抜けず、被写体の輪郭が不自然になっているため、照明を調整するよう指示する。 -
「このスタジオ、最新のクロマキーシステムを導入したんだって」
新しいクロマキー合成のシステムが導入されたことを話す。 -
「グリーンバックでの撮影は、髪の毛の処理が難しい」
グリーンバックでのクロマキー合成は、髪の毛のように細い部分の処理が難しいことを説明する。 -
「この映像の、クロマキー合成、見事だよね。違和感が全くない」
クロマキー合成が見事で、自然な仕上がりになっていることを評価する。
「クロマキー」の注意点
- キーカラーと同系色の服装や小道具は避ける
背景と同じ、または近い色の服などを着ていると、その部分も透明になってしまいます。 - 照明を均一に当てる
背景にムラがあると、きれいにキーイング処理ができません。 - 被写体の影に注意する
被写体の影が背景に落ちると、影の部分が抜けずに残ってしまうことがあります。 - 髪の毛などの細かい部分は処理が難しい
髪の毛のように細い部分は、きれいに切り抜くのが難しい場合があります。
「クロマキー」に関連する用語
- キーイング: 映像信号から特定の色を抽出する処理のこと。
- キーヤー: キーイング処理を行う機器やソフトウェアのこと。
- スピル: 背景の色が被写体に反射して、被写体の輪郭が背景色を帯びてしまう現象。
- マット: クロマキー合成で、被写体を切り抜くための型のこと。
テレビ業界では、天気予報、ニュース番組、映画、ドラマ、CMなど、様々な場面で活用されています。
「クロマキー」は、現実には撮影が難しい映像を、簡単に、そして安全に作り出すことができる、非常に便利な技術です。
この解説が、「クロマキー」についての理解を深める助けになれば幸いです。