前置詞 with は、英語において非常に重要な前置詞であり、多様な意味と用法を持つ多義語です。
そのため、文脈に応じて適切な解釈をする必要があります。本稿では、with の基本的な意味から、さまざまな用法、慣用表現、そして他の前置詞との違いまでを詳しく解説し、英語学習者にとっての with の難しさについても触れていきます。

with の基本的な意味

with の基本的な意味は、「~と一緒に」、「~と共存して」です。これは、人や物事の付随を表す場合に用いられます 。
この意味は、古英語や中英語においては「~に対して」、「~に反対して」といった意味で用いられていました 。  

with は、主語と目的語の間の相互作用や関係を示す動詞と共に用いられることも多く、例えば「chatting with the troops (軍隊と談笑する)」や「agreeing with me (私に同意する)」のように使われます。

例文:

  • I will go with you. (私はあなたと一緒に行きます。)
  • He fought with his brother against the enemy. (彼は敵に対して兄と戦った。)

with のさまざまな用法

with は、基本的な意味に加えて、さまざまな用法を持ちます。ここでは、主要な用法を具体的な例文とともに解説します。

1. 付帯状況

「~と一緒に」という意味から派生し、ある動作や状態に伴う状況を表す際に with を用います。

例文:

  • She arrived with her boyfriend. (彼女はボーイフレンドと一緒に到着した。)
  • I don’t like tea with milk. (私はミルク入りの紅茶は好きではありません。)  
  • The room was littered with toys. (部屋はおもちゃで散らかっていた。)
  • He looked at her with a hurt expression. (彼は傷ついた表情で彼女を見た。)

音楽の伴奏

音楽の伴奏を表す際にも with を用いることができます。
この場合、「as an accompaniment to」や「in accompaniment to」といった表現がよく使われます。

例文:

  • He played the guitar in accompaniment to the choir’s chant. (彼は聖歌隊の歌にギターで伴奏した。)

2. 道具・手段

動作を行う際に用いる道具や手段を表す場合にも with を用います。

例文

  • Cut it with a knife. (ナイフでそれを切ってください。)
  • They opened the package with a knife. (彼らはナイフでパッケージを開けた。)
  • I cleaned the floor with a mop. (私はモップで床を掃除しました。)

3. 原因・理由

感情や状態の原因・理由を表す際に with を用いることがあります。with が表す原因は、感情的なものや状況的なものが多く、物理的な原因を表す場合は by を用いることが多いです。

例文

  • She blushed with embarrassment. (彼女は恥ずかしさで顔を赤らめた。)
  • She is trembling with fear. (彼女は恐怖で震えている。)
  • The accident happened by his carelessness. (その事故は彼の不注意によって起こった。)

4. 譲歩

「~にもかかわらず」という意味で、譲歩を表す際にも with を用いることがあります。

例文

  • With all her cleverness, she failed. (彼女はとても賢かったにもかかわらず、失敗した。)  
  • With all the lesson preparation I have to do, I work 12 hours a day. (やらなければならないレッスンの準備がすべてあるにもかかわらず、私は1日12時間働いています。)

5. 所有・特徴

人や物が何かを所有している、または何か特徴を持っていることを表す際にも with を用います。

例文:

  • animals with horns (角のある動物)
  • a person with a hot temper (短気な人)

with を用いた慣用表現

with を用いた慣用表現は数多く存在します 。ここでは、いくつかの例とその意味、使い方を解説します。

慣用表現 意味 例文
with that それを言った後 With that, he left the room. (そう言って、彼は部屋を出て行った。)
with it ファッショナブルな She’s not very with it. (彼女はあまりファッショナブルではない。)
on good terms with ~と仲が良い I’m on good terms with my neighbors. (私は近所の人と仲が良いです。)
on one’s own 1人で I did it on my own. (私はそれを1人でやりました。)
kill two birds with one stone 一石二鳥 By cycling to work, she kills two birds with one stone—she saves money and gets exercise. (自転車通勤することで、彼女は一石二鳥を得る。お金を節約し、運動にもなる。)
back against the wall 窮地に立たされている With no money and rent due tomorrow, I had my back against the wall. (お金がなく、明日が家賃の支払期限なので、私は窮地に立たされている。)
with concessions (譲歩付きで) 不動産取引において、売主が買主に対して、例えば住宅ローンの金利を引き下げるポイントの支払い、固定資産税、登記費用など、購入に関連する費用の一部を負担すること。 The house was sold with concessions to attract buyers in a slow market. (低迷した市場で買い手を惹きつけるために、その家は譲歩付きで売却された。)

with と似た意味を持つ前置詞との違い

with と似た意味を持つ前置詞として、like, by, through などが挙げられます。これらの前置詞との違いを、以下の表を用いて比較してみましょう。

Preposition Meaning Example with ‘with’ Example without ‘with’
like ~のように (類似) She sings with passion like a professional. (彼女はプロのように情熱的に歌う) She looks like her mother. (彼女は母親に似ている。)
by ~によって (動作の主体、手段) The letter was delivered by a mail carrier. (その手紙は郵便配達員によって配達された。) The book was written by my father. (その本は私の父によって書かれた。)
through ~を通して (空間、時間、手段) I learned about the news through a friend. (私は友人を通してそのニュースを知った。) He walked through the forest. (彼は森の中を歩いた。)

with と by の使い分け

道具や手段を表す場合、with は道具そのものを、by は動作の主体や手段を強調する場合に用いられます。

  • I cut the apple with a knife. (私はナイフでリンゴを切った。) – 道具 (ナイフ) に焦点
  • The apple was cut by Mary. (そのリンゴはメアリーによって切られた。) – 動作の主体 (メアリー) に焦点

英語学習者にとっての with の難しさ

with は多義語であるため、英語学習者にとってはその使い分けが難しい場合があります。
英語学習者は、前置詞の多様な意味と用法を理解するのに苦労することがあります 。
特に、時制や相 (アスペクト) の理解、冠詞 (a, the) の使い分けなどは、多くの学習者にとって課題となっています 。

with の使い分けを克服するためには、以下の方法が有効です。

  • 多くの例文に触れることで、with のさまざまな用法を理解する。
  • 類似した意味を持つ前置詞との違いを意識し、使い分けを練習する。
  • 実際に with を使った英文を作成し、ネイティブスピーカーに添削してもらう。

結論

with は、英語において非常に重要な前置詞であり、さまざまな文脈で用いられます。
本稿では、with の基本的な意味から、さまざまな用法、慣用表現、そして他の前置詞との違いまでを詳しく解説しました。with は、単に「~と一緒に」という意味だけでなく、付帯状況、道具・手段、原因・理由、譲歩、所有・特徴など、幅広い意味を表すことができます。

with を正しく使いこなすためには、文脈に応じた適切な解釈と、他の前置詞との使い分けを理解することが重要です。
英語学習者は、多くの例文に触れ、実際に with を使った英文を作成する練習を通して、with の多様な用法を習得していく必要があります。

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