「ブルーオーシャン戦略(Blue Ocean Strategy)」とは、競合他社と血みどろの価格競争・機能競争が繰り広げられている既存の市場(レッドオーシャン=赤い海)を避け、これまでにない全く新しい価値を提供することで、競争相手の存在しない未開拓の市場(ブルーオーシャン=青い海)を自ら創造する経営戦略のことです。
INSEADのW・チャン・キム教授とレネ・モボルニュ教授によって提唱されました。従来の「高機能にして高価格にする」か「低機能にして低価格にする」かというトレードオフを覆し、「低コスト」と「差別化」を同時に達成する(バリューイノベーション)という革新的なアプローチが最大の特徴です。
- 競争を無意味にする: 競合からシェアを奪い合うのではなく、新しい顧客(非顧客)を開拓して需要をゼロから創造することで、競争そのものを無意味にする。
- ERRCグリッドの実行: 「取り除く(Eliminate)」「減らす(Reduce)」「付け加える(Create)」「高める(Raise)」という4つのアクションで、業界の常識を覆す製品を作る。
- 価値の非対称性: 例えばシルク・ドゥ・ソレイユは、動物の曲芸(高コストで社会的批判あり)を「取り除き」、芸術性や演劇性という新しい価値を「付け加える」ことで、サーカスと演劇の中間に全く新しい市場を作った。
ERRCフレームワーク(アクション・マトリクス)
ブルーオーシャンを創り出すための思考ステップです。
- Eliminate(取り除く):業界で当たり前とされている要素のうち、実は顧客にとって不要なものを完全に廃止する。
- Reduce(減らす):業界の過剰なサービスやオーバースペックな機能を、標準以下まで大胆に削減する。
- Raise(高める):業界が妥協している要素のうち、顧客が真に求めているレベルまで大幅に引き上げる。
- Create(付け加える):業界でこれまで一度も提供されたことがない、新しい価値要素をゼロから創造する。
「ブルーオーシャン戦略」の具体的なユースケース・会話例
プランナーA:「新しい美容室を開業するなら、流行のシャンプーやマッサージ、丁寧なドリンクサービス、お洒落な内装を極めて、他の高級サロンと競いましょう!」
創業者B:「それではレッドオーシャンでの泥沼の競争になるよ。ブルーオーシャン戦略でいこう。我々のERRCはこうだ。シャンプーや事前予約、長時間の接客トーク、ドリンクなどの過剰サービスを『完全に取り除く(E)』。髪のカット時間だけを10分に『減らす(R)』。カット自体の正確性と回転率を『高める(R)』。そして、駅ナカの便利な立地という手軽さを『付け加える(C)』。これによって『時間がないが、髪だけを安くサッと切りたい』というサラリーマン向けのブルーオーシャン(QBハウスのモデル)が完成するんだ。」
「レッドオーシャン(競争)」と「ブルーオーシャン(価値創造)」の比較
| 比較指標 | レッドオーシャン(血みどろの既存市場) | ブルーオーシャン(競争のない新市場) |
|---|---|---|
| 戦略の焦点 | 既存の競争相手に打ち勝つ(シェアの奪い合い)。 | 競争そのものを無意味にする(新規需要の創造)。 |
| コストと価値 | 「高コスト・高価値」か「低コスト・低価値」のトレードオフ。 | 「低コスト」と「高付加価値(差別化)」を同時に実現する。 |
よくある疑問(FAQ)
Q:ブルーオーシャンはいつまでも「競争のない海」のままでいられますか?
A:いいえ。あなたがブルーオーシャンを開拓して大きな利益を上げ始めると、必ず他社がその美味しい市場を発見し、真似をして参入してきます。結果として、開拓したブルーオーシャンも時間の経過とともにいずれはレッドオーシャン化します。したがって、先行者利益を活かして圧倒的なブランド力やスイッチングコストを築く防衛策をとるか、あるいは常に次のブルーオーシャンを開拓し続ける「組織の柔軟性とイノベーション力」を維持することが本質的な戦略マナーです。
差別化のためのサービス切り捨てとマナー
ブルーオーシャンを狙って「何かを取り除く(Eliminate)」または「減らす(Reduce)」際、顧客に対して十分な事前説明や代替手段を用意せず、単に「コスト削減のためサービスを廃止します」と一方的に押し付け、既存のユーザーに多大な不便と損失を強いるのは、企業としての信頼を自ら捨てる重大なマナー違反です。引き算の戦略を行う際こそ、「なぜそれを廃止し、代わりにどのような新しい価値(時間短縮や低価格など)を提供するのか」をユーザーに対して明確かつ誠実に説明し、納得してもらう配慮がプロとしての絶対的エチケットです。