リテラシーとは、伝統的に読み書き能力と定義されてきました。
しかし、現代社会においては、より広義に解釈され、特定の分野における知識や能力を指す場合もあります。
UNESCO(国際連合教育科学文化機関)は、リテラシーを「様々な文脈に関連する印刷物や筆記物を使用して、識別、理解、解釈、創造、伝達、計算する能力」と定義しています。
これは、単に読み書きができるだけでなく、情報を理解し、活用し、社会に参画するために必要な能力を包括的に捉えた定義と言えるでしょう。
さらに、日常生活や仕事において必要最低限の読み書き能力を指す「機能的リテラシー」という概念も存在します。
機能的リテラシーは、社会生活を送る上で必要な情報を読み解き、自身の生活に必要な手続きを理解し、遂行するために不可欠な能力です。
リテラシーの種類
リテラシーは、様々な種類に分類することができます。 近年では、従来の読み書き能力に加え、デジタル技術やメディアの活用、多様なコミュニケーション手段に対応できる能力などが重要視されています。
主な種類と内容は以下の通りです。
- 基礎的なリテラシー: 読み書き、計算など、基礎的な知識や技能。
- 言語リテラシー: あらゆる種類の言語を読み、書き、理解し、話す能力
- 数学リテラシー: 数値的概念を応用する能力
- コンテンツ特化型リテラシー: 特定の分野における専門知識や情報活用能力。
- コンピューターリテラシー: コンピューターやデジタル技術を使いこなす能力
- 科学リテラシー: 科学を理解する能力
- 統計リテラシー: 統計やデータを理解し、推論する能力
- ヘルスリテラシー: 医療情報を理解する能力
- 音楽リテラシー: 文化的に決定された音楽の知識体系と音楽的能力
- 機能的リテラシー: 情報を理解し、活用し、社会に参画するために必要な能力。
- 批判的リテラシー: メディアに埋め込まれた差別を見抜く能力
- メディアリテラシー: 様々な種類のメディアを理解し、その主張をより広い文脈で捉える能力
- エコロジカルリテラシー: 自然システムとその相互作用を理解する能力
- 災害リテラシー: 災害に関する情報を入手し、活用する能力、災害に効果的に対応し、回復する能力
- ビジュアルリテラシー: ボディランゲージ、写真、地図、ビデオなど、画像の情報を解釈する能力
- ソーシャルリテラシー: 社会的相互作用を通じて得られる能力
- マルチリテラシー: 従来のリテラシーに加え、デジタル、テクノロジー、オーディオ、空間、ジェスチャー、マルチモーダルなどの多様なリテラシーを含む概念 。
マルチリテラシーは、デジタル社会において必要とされる、多様な情報に対応し、コミュニケーションを図る能力を育成する上で重要です。
リテラシーと社会
リテラシーは、社会の発展と密接に関係しています。
文字の発明は、知識の蓄積と伝達を飛躍的に促進し、文化、科学、技術の発展に大きく貢献しました 。
また、歴史的な記録が可能になったことで、世代を超えた文化の伝承や、客観的な思考、著作権の概念などが生まれました。
現代社会におけるリテラシーの重要性
現代社会は、情報化、グローバル化、高度化が進み、複雑で変化の激しい時代となっています。
このような社会において、リテラシーは、個人や社会の発展に不可欠な基盤となっています。
リテラシーは、以下のような点で重要です。
- 貧困の削減: リテラシーは、教育、雇用、健康などの機会を拡大し、貧困から抜け出す力を与えます。
- 社会参加の促進: 情報へのアクセス、理解、発信を可能にし、社会参加を促進します。
- 健康増進: 健康情報へのアクセスと理解を深め、健康的な生活を送るために必要な知識と行動を促します。
- 持続可能な開発: 環境問題や社会問題など、地球規模の課題を理解し、解決策を探求する能力を高めます。
- 生涯学習: 常に新しい情報や知識を学び続けるために必要な基盤となります。
さらに、リテラシーは、個人が社会に積極的に参画し、より良い社会を築いていく上で重要な役割を果たします。
例えば、政治問題や社会問題を理解し、議論に参加することで、より良い政策や社会システムの実現に貢献することができます。
また、情報を読み解き、批判的に思考することで、メディアや情報に惑わされることなく、主体的に判断し、行動することができます。
一方、リテラシーの不足は、個人や社会に様々な悪影響を及ぼします。
例えば、健康情報へのアクセスや理解不足は、健康状態の悪化や医療費の増加につながる可能性があります。 また、情報社会への参加が制限されることで、社会的な孤立や不平等が生じる可能性もあります。
リテラシー向上のための方法と取り組み
リテラシー向上のためには、個人、家庭、学校、地域社会など、様々なレベルでの取り組みが必要です。
具体的な例としては、以下のようなものがあります。
- 読書習慣の育成
幼児期からの読み聞かせや、読書環境の整備などを通して、読書習慣を育むことが重要です 。 また、読書を通して様々な知識や考え方に触れることで、読解力や考える力を高めることができます。 - 効果的な指導法
フォニックス指導、系統的なデコード、読解戦略など、エビデンスに基づいた指導法を導入することが重要です。 - 家庭での学習支援
家庭での学習習慣の確立、読書環境の整備、親子の対話などを通して、家庭で リテラシー を支援することが重要です。 例えば、親子で一緒に読書をしたり、日常生活の中で文字や言葉に触れる機会を増やすことで、自然にリテラシー能力を高めることができます 。 - 地域社会との連携: 図書館、地域団体、企業など、地域社会全体でリテラシー向上に取り組むことが重要です。
これらの取り組みを効果的に進めるためには、個人、家庭、学校、地域社会が連携し、それぞれが役割を果たすことが重要です。
リテラシーに関する最近の動向と議論
近年、リテラシーに関する動向や議論としては、以下のようなものがあります。
- 家庭リテラシーの重要性
家庭におけるリテラシー環境の整備や、親子の対話など、家庭リテラシーの重要性が再認識されています 。 - デジタルリテラシー
インターネットやソーシャルメディアの普及に伴い、デジタルリテラシーの重要性が高まっています 。 デジタルリテラシーには、情報へのアクセス、評価、活用、情報発信、コミュニケーションなど、様々な能力が含まれます。 - 多様性への対応: 様々な文化的背景を持つ学習者に対応したリテラシー教育の必要性が高まっています 。
結論
リテラシーは、現代社会において、個人や社会の発展に不可欠な能力です。 読み書き能力だけでなく、情報活用能力、コミュニケーション能力、批判的思考力など、様々な能力を包括的に捉える必要があります。
リテラシー向上のためには、個人、家庭、学校、地域社会など、様々なレベルでの継続的な取り組みが重要です。
特に、幼児期からの読書習慣の育成、エビデンスに基づいた指導法の導入、家庭での学習支援、地域社会との連携などが重要となります。
21世紀は、情報化、グローバル化が加速し、社会構造や価値観が大きく変化する時代です。 このような時代において、リテラシーは、変化に対応し、社会に主体的に参画するために不可欠な力となります。
リテラシーを高めることで、個人が自身の可能性を最大限に発揮し、より良い社会を創造していくことができるでしょう。