ソバーキュリアス

近年、健康志向の高まりとともに、「ソバーキュリアス(Sober Curious)」という言葉が注目を集めています。
この言葉は、2018年にルビー・ウォリントン氏の著書『Sober Curious』で初めて登場し、飲酒に対する意識的なアプローチを指します。

本稿では、ソバーキュリアスという用語について、その定義、ライフスタイルを選択する理由、禁酒との違い、メリットとデメリット、実践するためのヒント、そして参考資料を紹介します。

ソバーキュリアスの定義

ソバーキュリアスとは、日本語で「しらふに興味がある」という意味で、飲酒習慣を意識的に見直し、習慣や社会的な期待ではなく、自分の意志で飲酒するかどうか、いつ、どれくらい飲むかを選択することです。
これは、アルコールが自分の生活に与える影響について深く考えることを意味し、具体的な実践方法は人それぞれです。

ソバーキュリアスのライフスタイル

ソバーキュリアスを実践する人々は、必ずしも完全に断酒するわけではありません。
飲酒量を減らす、特定の期間だけ断酒する、あるいは状況に応じて飲酒するかどうかを選択するなど、様々な方法があります 。

例えば、「ドライ・ジャニュアリー」や「ソバー・オクトーバー」のように、1ヶ月間アルコールを断つ期間を設ける人もいます。また、平日は飲酒せず、週末だけ楽しむ、あるいは社交的な場では飲酒量を減らすなど、柔軟なアプローチをとる人もいます。 

ソバーキュリアスのライフスタイルは、アルコールとの付き合い方を見直し、より健康的な飲酒習慣を確立するためのものです。

なぜソバーキュリアスを選ぶのか?

人々がソバーキュリアスのライフスタイルを選択する理由は様々ですが、主な理由としては以下の点が挙げられます。

  • 健康への意識向上
    睡眠の質向上、エネルギーレベルの増加、免疫機能の強化、アルコール関連の健康問題のリスク軽減など、健康上のメリットを求める人が増えています。

  • メンタルヘルスの改善
    アルコールは認知機能や感情の安定に影響を与える可能性があり、飲酒量を減らすことで集中力や意思決定能力の向上を実感する人がいます。

  • 経済的な節約
    アルコールは、特に外食時など、高額になる可能性があり、飲酒量を減らすことで節約につながります。

  • 人間関係の改善
    アルコールの影響を受けずに、より有意義なコミュニケーションを図り、健全な人間関係を築くことができます。

  • 社会規範の変化
    特に若い世代を中心に、従来の飲酒文化に対する疑問や、健康志向の高まりから、飲酒しない、あるいは控えめにすることが社会的に受け入れられるようになってきています。
  • アルコールと社会的なつながりの文化的な結びつきへの挑戦
    ソバーキュリアスは、お祝い事、リラックス、社会的なつながりにアルコールを結びつける文化的な考え方に疑問を投げかけ、アルコール以外の方法でこれらの経験を求めることを促します。

ソバーキュリアスを受け入れる上での課題

ソバーキュリアスを実践する上で、いくつかの課題も存在します。

  • 時間的制約
    仕事や家族の世話、家事などで、飲酒の選択について考える時間や、アルコールなしでストレスを管理するための活動に費やす時間が限られる場合があります。

  • 住居環境
    選択が支持され、尊重される安全で安定した、手頃な価格で快適な住環境を持つことは、行動を変えたり、より健康的な習慣を形成したりする上で重要です。

  • 社会的なサポート
    必要なときに助けやサポートを求められる、友人、家族、またはその他の信頼できる人々との良好な関係が必要です。

  • 経済的なリソース
    メンタルヘルスやフィジカルヘルスのサービス、運動(ジムの会員など)、有料のモバイルアプリ、またはソバーキュリアスのライフスタイルをサポートできるその他のサービスに費やすことができる金額 。

  • 地域サービスへのアクセス
    地方や遠隔地に住んでいると、特定の健康サービスや、アルコール中心ではない社会活動へのアクセスが制限される可能性があります 。

  • 社会的なプレッシャー:
    飲酒が当たり前の社会では、飲酒しない、あるいは控えめにすることに対するプレッシャーを感じる場合があります。
    周囲から「なぜ飲まないのか」と質問されたり、判断されたりすることもあります。

バーキュリアスと禁酒の違い

ソバーキュリアスは、禁酒とは異なります。禁酒は、アルコールを一切摂取しないことを指しますが、ソバーキュリアスは、必ずしも完全に断酒する必要はありません。
飲酒量を減らす、特定の期間だけ断酒する、あるいは状況に応じて飲酒するかどうかを選択するなど、柔軟なアプローチが可能です。
ソバーキュリアスは、アルコールとの関係性を見直し、より健康的な飲酒習慣を確立するためのものです。

ノンアルコール飲料の台頭

ソバーキュリアスのムーブメントの高まりとともに、ノンアルコール飲料の人気が高まっています。
ノンアルコールビール、ワイン、モクテルなど、様々な種類のノンアルコール飲料が登場し、社交の場でもアルコールを飲まずに楽しむことができるようになっています。
これらの飲料は、アルコールの代替品として、ソバーキュリアスのライフスタイルをサポートする上で重要な役割を果たしています。

ソバーキュリアスのメリットとデメリット

ソバーキュリアスには、以下のようなメリットとデメリットがあります。

メリット

メリット 説明
睡眠の質の向上 より深く、より質の高い睡眠を得られるようになります
体重減量 アルコールのカロリー摂取を抑え、体重管理に役立ちます
エネルギー増加 疲労感が軽減し、より活動的になれます
集中力向上 思考がクリアになり、集中力や生産性が向上します
気分の安定 アルコールによる気分のムラが減り、精神的に安定します
心臓の健康改善 血圧や心拍数を安定させ、心臓病のリスクを減らします
肝臓の機能向上 肝臓への負担を軽減し、肝機能を改善します
免疫力の向上 免疫システムが強化され、病気になりにくくなります
がんのリスク軽減 アルコール関連のがんのリスクを減らします
経済的な節約 飲酒にかかる費用を節約できます
人間関係の改善 アルコールの影響を受けないことで、より健全な人間関係を築けます
自己認識の向上 自分の飲酒習慣やアルコールとの関係性について深く考えることができます
肌の健康改善 肌の調子や見た目が良くなることがあります

ルビー・ウォリントン氏は、ソバーキュリアスを実践したことで、目に見えるほどの体重減量、ニキビの消失、睡眠の質の向上、エネルギーレベルの増加を実感したと報告しています 。

デメリット

デメリット 説明
社会的なプレッシャー 飲酒が当たり前の社会では、飲酒しない、あるいは控えめにすることに対するプレッシャーを感じる場合があります
代替手段の必要性 アルコールの代わりに楽しめる飲み物やアクティビティを見つける必要があります
依存症のリスク 依存症の人は、ソバーキュリアスではなく、専門家のサポートが必要です
心臓病のリスク増加 少量または適度な飲酒でも、高血圧や冠動脈疾患などの心臓病のリスクが高まる可能性があります
脳の萎縮 1日1杯のアルコール摂取でも、脳の萎縮につながる可能性があります

ソバーキュリアスを実践するためのヒント

ソバーキュリアスを実践するためのヒントを、マインドセットと内省社会的な戦略ライフスタイルの変化 の3つのカテゴリーに整理して紹介します。

マインドセットと内省

  • 目標と境界線を設定する
    飲酒量をどれくらい減らしたいのか、どのような状況で飲酒を避けたいのか、明確な目標と境界線を設定しましょう。

  • メディアのメッセージに気づく
    薬物やアルコールを正常化させるような、メディアからの微妙なマーケティングメッセージに気づきましょう。
    映画、番組、CM、広告板などで、薬物やアルコールがどのように描かれているかを観察してみましょう。

  • 信念に挑戦し、事実に焦点を当てる
    薬物やアルコールの使用に関するメリットとデメリットの両方の事実を調べることで、自分の考えを見直してみましょう。
    否定できない真実に焦点を当てることで、信念を再構築し、長期的な健康的な選択をサポートする、よりバランスの取れた視点を構築することができます。

  • 誘惑に注意する
    飲酒したいという衝動に駆られたときは、その原因を探り、対処法を考えましょう。その欲求の根本にあるものは何でしょうか?ストレス、退屈、あるいは社会的なプレッシャーでしょうか?

  • メリットに目を向ける
    ソバーキュリアスを実践することで得られるメリット(睡眠の質向上、集中力向上など)に目を向け、モチベーションを維持しましょう。

  • 好奇心を受け入れる
    好奇心は、行動に疑問を投げかけるだけでなく、行動を促す信念を探求します。
    それは、人々が自己批判や全か無かの思考から解放され、開放性と柔軟性を持って新しい習慣を身につけることを可能にします。

社会的な戦略

  • 周囲に伝える
    家族や友人にソバーキュリアスを実践していることを伝え、理解と協力を得ましょう。

  • 飲酒しない理由を準備しておく
    人から飲酒しない理由を聞かれた場合に備え、答えを準備しておきましょう。
    「ドライ・ジャニュアリーに挑戦している」 、あるいは「明日の朝早いので」 のように、簡単に答えられるようにしておくと良いでしょう。

  • 境界線を設定し、伝える
    自分の選択に自信を持ち、それを表現することを練習し、自分自身や他人からの質問を避けないようにしましょう。
    好奇心、歓迎のサポートを守り、新しい充実したライフスタイルを探求する際に回復力を維持するのに役立つ、強力な境界線を構築しましょう。

  • 有意義な会話をする
    ソバーキュリアスになるという決断について、友人や家族と率直に話し合いましょう。
    自分の理由を共有することで、つながりを深め、サポートシステムを作ることができます。
    あなたの脆弱性と誠実さは、有意義な関係を育み、前向きな変化を促します 。

ライフスタイルの変化

  • 代替手段を見つける
    アルコールの代わりに楽しめる飲み物やアクティビティを見つけましょう。
    ノンアルコールカクテルやモクテル、お茶、コーヒー、運動、趣味など、様々な選択肢があります。

  • ソーシャルメディアを活用する
    ソバーキュリアスに関する情報やコミュニティは、ソーシャルメディアで多く見つけることができます。積極的に活用しましょう。

  • 断酒期間を設定する
    ドライ・ジャニュアリーやソバー・オクトーバーなど、一定期間の断酒に挑戦してみるのも良いでしょう。
    これらの期間は、一時的なアルコール断酒チャレンジ(TAAC)と呼ばれ、健康への影響に対する懸念から、アルコール摂取を一時的に控えるものです。

  • 環境を整える
    家にアルコールを置かない、お酒を飲む場所に近づかないなど、飲酒の機会を減らすように環境を整えましょう。

  • 新しい趣味や活動を見つける
    飲酒に費やしていた時間を、新しい趣味や活動に充てましょう。
    ダンス、スポーツ、ウォーキング、ゲーム、新しい食べ物の探求など、リラクゼーション、冒険、お祝いのための欲求を満たす計画を立てましょう。

  • マインドフル・ドリンキングを実践する
    飲酒する際は、量やペースを意識し、自分の体と心に耳を傾けながら、ゆっくりと楽しみましょう。

  • パーティーなどのイベントでは
    事前にパーティーの内容を把握し、飲酒したくなるような状況を避けられるように計画を立てましょう。
    ノンアルコール飲料を持参したり、信頼できる友人に相談したりするのも良いでしょう。

ソバーキュリアスに関する参考資料

ソバーキュリアスについてさらに詳しく知りたい場合は、以下の資料を参考にしてください。

  • 書籍:
    • 『Sober Curious』(ルビー・ウォリントン著)

結論

ソバーキュリアスは、アルコールとの関係性を見直し、より健康的なライフスタイルを追求するための新しい選択肢です。
健康意識の高まりや社会規範の変化とともに、今後ますます注目を集めることが予想されます。

ソバーキュリアスのムーブメントと一時的なアルコール断酒チャレンジ(TAAC)は、エビデンスに基づいた行動介入と共通点があることが指摘されています。
これは、これらのアプローチが単なる流行にとどまらず、治療的な価値を持つ可能性を示唆しています。

ソバーキュリアスは、個人の健康だけでなく、社会全体にも影響を与える可能性を秘めています。
アルコール中心の社会から、より多様で健康的なライフスタイルが受け入れられる社会への変化を促進する可能性があります。

このトピックに関する継続的な研究とオープンな対話が重要です。本稿で紹介した情報が、ソバーキュリアスについて理解を深め、実践するきっかけになれば幸いです。

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