近年、若者の間で「てえてえ」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
この言葉は、以前から存在する「尊い」と関連があり、その進化系として捉えることができます。
本稿では、「尊い」と「てえてえ」の意味や関連性、具体的な用例、使われる文脈やニュアンスなどを分析し、「てえてえ」の持つ特徴について解説していきます。
「尊い」と「てえてえ」の意味
まず、「尊い」と「てえてえ」それぞれの言葉の意味を明確にしておきましょう。
「尊い」の意味
「尊い」は、本来「価値や身分の高いこと」「非常に価値が高いこと」「ありがたいこと」といった意味を持つ言葉です。
しかし、近年では若者言葉として「素晴らしい」「最高」「感動した」「言葉にできないくらい好き」といった意味合いで使われることが多くなっています。
特に、オタク用語から広まった言葉であり、「推しが尊い」のように、自分が応援しているアイドルやキャラクターへの強い愛情表現として使われるケースが目立ちます。
「てえてえ」の意味
「てえてえ」は、「尊い」のくだけた言い方であり、意味合いとしてはほぼ同じです。
感動や感嘆、愛情といった感情を表現する際に使われますが、「尊い」よりも語感が柔らかく、親しみやすい印象を与えます。
「てえてえ」の語源と由来
「てえてえ」の語源については諸説ありますが、最も有力な説は、漫画家の中音ナタ氏が2018年にTwitterで公開した4コマ漫画を起源とするものです。
この漫画では、『ドラゴンボール』の孫悟空の口調を真似て「めちゃくちゃてぇてえなぁ」というセリフが使われており、このことがきっかけでバーチャルYouTuber界隈を中心に「てえてえ」という言葉が広まったと言われています。
「尊い」の進化系としての「てえてえ」
「てえてえ」は、「尊い」の意味合いを保ちつつ、以下の点で進化した表現と言えます。
- 語感の緩和
「尊い」よりも砕けた表現であるため、よりカジュアルな場面で使用しやすくなっています。
例えば、親しい友人との会話で「この前のライブ、マジてえてえだった!」のように使うことができます。 - 感情の高ぶりの表現
「てえてえ」は、「尊い」と発音できないほど感動している様子を表す場合もあり、感情の高まりをより強調することができます。 - 対象の拡大
当初はバーチャルYouTuber界隈で使われていましたが、現在ではジャニーズやK-POPアイドルなど、様々な対象に対して使われるようになっています。 - 守りたいという気持ちの表出
「てえてえ」という言葉には、「尊い」と同様に、対象を大切にしたい、守りたいという気持ちが込められています。
これは、対象が弱く、純粋で、守るべき存在であると認識されているからこそ生まれる感情と言えるでしょう。
「尊い」と「てえてえ」の使い分け
「尊い」と「てえてえ」は、どちらも似たような意味合いで使われますが、使い分けにはいくつかのポイントがあります。
- フォーマル度
「尊い」の方がややフォーマルな印象を与えるため、公式な場や目上の人に対して使う場合は「尊い」の方が適切です。
一方、「てえてえ」は友人や家族など親しい間柄で使う方が自然です。 - 親密度
親しい友人や仲間内など、カジュアルな場では「てえてえ」を使うことで、親近感や共感を表現することができます。 - 感情の強さ
より強い感動や興奮を表したい場合は、「てえてえ」を使うことで感情の高ぶりを強調することができます。
「てえてえ」が使われる文脈とニュアンス
「てえてえ」は、主に以下の文脈で使用されます。
- アイドルやキャラクターへの愛情表現
推しに対する愛情や、その行動・言動に対する感動を表す。「〇〇の笑顔、マジてえてえ」のように使われます。 - 人間関係への感動
友人同士の友情や、家族間の愛情など、良好な人間関係に対する感動を表す。「あの二人、一緒にいるとホントてえてえ」といったように使われます。 - 動物やペットのかわいらしさへの反応
可愛らしい動物やペットを見た時、その愛らしさに心を打たれた際に使われます。例えば、子犬がじゃれ合っているのを見て「てえてえ~」と呟く、といった具合です。
これらの文脈において、「てえてえ」は、対象への強い愛着や感動、共感を表現する言葉として機能します。
また、「てえてえ」と感じる対象は、多くの場合、守るべき存在、あるいは応援したい存在として認識されています。
「てえてえ」と対比される状態
「てえてえ」のような高揚した感情とは対照的に、性的な行為の後などに訪れる冷静な状態を「賢者タイム」と呼ぶことがあります。
賢者タイムは、高ぶった感情が落ち着き、冷静さや達観したような感覚を覚える状態です。
「てえてえ」と「賢者タイム」は対照的な状態であり、この対比によって「てえてえ」が表す感情の強さがより際立ちます。
英語での表現
英語で「てえてえ」のニュアンスを表現したい場合は、「precious」という言葉が近いでしょう。
「precious」は、「大切なもの」「宝物」「貴重なもの」といった意味を持ち、「my precious」で「私の大切なもの(人)」、つまり「私の推し」という意味になります。
若者言葉・インターネットスラングとしての「てえてえ」
「てえてえ」は、若者言葉やインターネットスラングとしての特徴も持っています。
- 流行
若者の間で流行している言葉であり、時代によって変化する可能性があります。 - 仲間意識
インターネットコミュニティなどで共通の言葉として使われることで、仲間意識を高める効果があります。 - 感情表現の多様化
若者言葉特有の表現方法によって、感情表現の幅を広げています。 - 関連するスラング
「てえてえ」と似たような文脈で使われる若者言葉としては、「エモい」や「しんどい」などがあります。
これらの言葉は、いずれも何らかの対象に対して強い感情を抱いている状態を表す言葉であり、「てえてえ」と組み合わせて使われることも少なくありません。
まとめ
「てえてえ」は、「尊い」の進化系として、よりカジュアルで感情的な表現として若者の間で広まっている言葉です。
インターネット文化の中で生まれた言葉であり、若者言葉やインターネットスラングとしての特徴を持っています。
「てえてえ」は、対象への強い愛着や感動、共感を表現する言葉として、様々な文脈で使用されています。
また、この言葉を使うことで、共感や仲間意識を育むこともできます。
今後も、若者文化やインターネット文化の変化と共に、その使われ方やニュアンスが変化していく可能性があります。
「てえてえ」という言葉は、現代の若者文化における感情表現の多様化を示す一例と言えるでしょう。
それは、インターネットやSNSの普及により、若者たちがこれまで以上に多様な方法で自己表現を行うようになってきたことの表れなのかもしれません。