トライバリズム

社会における分断や対立が深まっている現状において 、「トライバリズム(部族主義)」という用語は、現代社会を理解する上で重要なキーワードとなっています。

トライバリズムの定義と意味

トライバリズムとは、共通の文化、価値観、信念などを共有する集団への強い帰属意識と、その集団以外に対する排他的な態度を特徴とする社会現象です。
これは、個人が自分の所属する集団を「内集団」、それ以外の集団を「外集団」と認識し、内集団への忠誠心や一体感を重視する一方で、外集団に対しては敵意や不信感を抱く傾向を指します。

部族主義は、文化、政治、スポーツなど、様々な文脈で用いられます。
文化的な部族主義は、共通の思考様式や行動様式によって社会が細分化され、それぞれの集団が独自の文化を形成することを指します。
政治的な文脈では、支持政党や政治的イデオロギーに基づいて人々が分断され、対立が生じる現象を指す場合もあります。

さらに、部族主義は、部族社会の慣習や信念、部族への強い忠誠心、あるいは、個別の部族として存在している状態を指すこともあります。

部族は、忠誠心を要求する代わりに、帰属意識による安心感を与えるという側面も持ち合わせています。 しかし、その反面、部族は個人の思考を停止させ、集団の考え方に従わせることを強いる可能性も孕んでいます。

トライバリズムの起源と歴史的背景

部族主義的な行動は、人類が狩猟採集生活を送っていた時代から見られる現象です。
人類は進化の過程で、小規模な集団で生活し、限られた資源を奪い合う環境の中で、集団への帰属意識は生存に不可欠でした。
外集団に対する警戒心は、集団の安全を守る上で重要な役割を果たしました。

「tribe(部族)」という言葉の起源は、古代ローマの「トリブス」に遡ります。
近代に入ると、ヨーロッパによる植民地支配の過程で、植民地化された人々の社会集団を指す用語として「部族」が用いられるようになりました。

興味深いことに、北米大陸北西部では、1万年以上前から部族社会が存在していたという考古学的証拠があります。
ヨーロッパ人が接触する以前から、これらの部族は独自の文化や伝統、医療に関する知識体系を持っていました。

現代社会におけるトライバリズムの具体例

現代社会においても、トライバリズムは様々な形で現れています。

  • 政治における分極化
    政治的なイデオロギーや支持政党に基づいて人々が分断され、対立が激化する現象。
    例えば、Brexitは、イギリスを遠くから支配し、「真のイギリス人」の意見を無視しているとされたロンドンやブリュッセルのエリート層に対するポピュリストの反発として解釈できます。
    このような現象は、ソーシャルメディアの普及により、人々が自分の意見を支持する情報のみを選択的に摂取し、異なる意見に触れる機会が減少していることで、さらに加速しています。
    結果として、オンライン上のエコーチェンバー効果が生じ、部族主義的な傾向が強まっていると言えるでしょう。
  • スポーツにおける熱狂的な応援
    特定のスポーツチームへの強い愛着と、ライバルチームへの敵対心。 サポーター同士の暴力行為や差別的な言動は、オトライバリズムの負の側面を示しています。
  • ソーシャルメディア上のコミュニティ
    共通の趣味や関心を持つ人々がオンライン上で集まり、閉鎖的なコミュニティを形成する現象。
    ヒップホップやカントリーミュージックのファンコミュニティ、SNSグループなどは、現代における部族の一種と言えるでしょう。
  • 企業文化
    企業や組織内で、特定の価値観や行動規範が共有され、従業員が強い一体感を形成する一方で、外部の人々に対して排他的な態度をとる場合。
    例えば、企業が自社のサステナビリティ活動をアピールすることで、特定の価値観を持つ「部族」からの信頼を得ようとするケースなどがあります。 
  • 宗教
    宗教的な信念に基づいて、異なる宗教や宗派を排除したり、対立したりする行為。
    例えば、キリスト教の若者離れの一因として、教会が「私たち」と「彼ら」という部族主義的な考え方にとらわれ、異なる価値観を持つ若者との対話を怠っていることが挙げられます。
  • 民族主義
    民族的なアイデンティティを過度に強調し、他の民族に対する差別や排斥を行うこと。

加えて、共通の過去や未来に対する想像は、部族主義的なアイデンティティを形成する上で重要な役割を果たします。

トライバリズムのメリットとデメリット

メリット デメリット
集団への帰属意識を高め、社会的な結束力を強化する。 集団間の対立や差別、排他的な行動を招き、社会の分断を深める。
共通の目標や価値観を共有することで、人々は協力し、困難な状況を乗り越えることができる。 外集団に対する偏見や敵意は、暴力や紛争に発展する可能性も孕んでいる。
集団に所属することで、個人はアイデンティティを確立し、安心感や安全を得ることができる。

トライバリズムは、社会的な結束力を強化するというメリットがある一方で、集団間の対立や差別を招き、社会の分断を深めるというデメリットも持ち合わせています。
これは、社会における cohesion(結束)の必要性と、exclusion(排除)の危険性の間の tension(緊張関係)を示しています。

部族主義は、競争や共通の脅威に対する認識によって助長される側面もあります。

トライバリズムと関連する社会現象や概念との関係性

トライバリズムは、以下のような社会現象や概念と密接に関連しています。

  • 内集団バイアス: 自分の所属する集団を優遇し、外集団を軽視する心理的な傾向。
  • 同調圧力: 集団の norms(規範)に従うように、個人に圧力がかかること。
  • 排他主義: 特定の集団のみを優遇し、他の集団を排除する考え方。
  • アイデンティティ政治: 個人のアイデンティティに基づいて、政治的な主張や運動を行うこと。
  • ポピュリズム: 民衆の感情や不満に訴えかける政治手法。

さらに、部族主義は、習慣や神話と深く結びついています。 習慣や神話は、部族内での conformity(同調)を強化し、部族主義的な行動を永続させる役割を果たします。
これは、アメフトのような危険なスポーツが、なぜアメリカで根強い人気を保っているのかを説明する一助となります。

結論

トライバリズムは、集団への帰属意識と外集団への排他性を特徴とする社会現象であり、人類の歴史と深く関係しています。現代社会においても、政治、スポーツ、ソーシャルメディアなど、様々な場面でトライバリズムが観察されます。

グローバリゼーション、アイデンティティ政治、ソーシャルメディアなどの要素が複雑に絡み合い、現代社会における部族主義は、社会的な結束の源泉となる一方で、対立や紛争の火種となる可能性も孕んでいます。

オトライバリズムは、社会の調和と共存を脅かす可能性のある社会現象である一方、人間の社会性にとって不可欠な側面も持ち合わせています。 現代社会におけるトライバリズムの影響を深く理解し、そのメリットとデメリットを踏まえた上で、社会の integration(統合)と多様性のバランスを保つ方法を探っていくことが重要です。

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