「アスタラビスタベイビー」は、スペイン語の “Hasta la vista, baby” をカタカナ表記した言葉です。
1991年公開の映画『ターミネーター2』で、アーノルド・シュワルツェネッガー演じるT-800が、敵であるT-1000を倒す直前に放ったセリフとして有名になりました。
日本語字幕では「地獄で会おうぜ、ベイビー」 、吹き替えでは「さっさと失せろ、ベイビー」 と、状況に合わせて意訳されています。
定義と意味
“Hasta la vista, baby” は、別れの挨拶であると同時に、相手を打ち負かす、あるいは見下すようなニュアンスを含む表現として使われることもあります。
Hasta la vista
“Hasta la vista” は、スペイン語で「また会う日まで」「また次に会う時まで」といった意味の別れの挨拶です 。直訳すると「見ることまで」となり 、一般的には「互いに(次)会う時まで」「後で会いましょう」「さようなら」を意味すると理解できます。
baby
“baby” は、英語で「赤ちゃん」という意味の他に、親しい間柄の人への呼びかけとして使われる言葉です。
起源と歴史的背景
“Hasta la vista” は、スペイン語圏で一般的な別れの挨拶として古くから使われてきました。
“baby” を加えた “Hasta la vista, baby” というフレーズが使われたのは、1970年のラクエル・ウェルチのテレビ特番でボブ・ホープが使用した例 や、1987年のジョディ・ワトリーのヒット曲 “Looking for a New Love” で使われた例 などが挙げられます。
“Hasta la vista, baby” が世界的に有名になったのは、映画『ターミネーター2』での使用がきっかけです 。興味深いことに、このフレーズは映画が有名になるずっと前から、監督のジェームズ・キャメロンと彼が電話で言い合っていた言葉だったそうです。
劇中では、ジョン・コナーがT-800にスラングの使い方を教えるシーンで “Hasta la vista, baby” が登場します。
そして、T-800は敵であるT-1000を倒す直前にこのセリフを放ちます。
機械であるターミネーターが人間のスラングを学習し、それを皮肉にも敵を倒す際に使っているという点が、このシーンのユーモアと文化的意義を際立たせています。
また、”baby” の前の間は「呼格のコンマ」と解釈されることで有名です。
使用例と文化的意味合い
映画『ターミネーター2』以降、”Hasta la vista, baby” は、別れの挨拶として、あるいは敵を倒す時など、様々な場面で使われるようになりました。
- 映画・音楽: 『ターミネーター3』 、スキンのアルバム『Hasta La Vista, Baby!』 、U2のライブアルバム『Hasta la Vista Baby! U2 Live in Mexico City』 など
- 政治
シュワルツェネッガーが政治活動で 、イギリス首相ボリス・ジョンソンが辞任表明時に使用 。ジョンソン首相は、後継者に向けて「アメリカとの緊密な関係を維持し、ウクライナを支持し、自由と民主主義を支持すること。
そして、自らが支持するものと今後も仲良くしろよ」という意味を込めてこのフレーズを使ったと分析されています。 - 日常会話
軽い別れの挨拶として。 - ユーロビジョン・ソング・コンテスト
2003年のウクライナ代表、2008年のベラルーシ代表、2000年のセルビア代表の楽曲のタイトルとして使用 。
“Hasta la vista, baby” は、映画の名セリフとして広く知られるようになり、ポップカルチャーにも大きな影響を与えました 。特に日本では、「地獄で会おうぜ、ベイビー」という字幕のインパクトも相まって、多くの人が知るフレーズとなっています。
元々は「また会う日まで」という比較的穏やかな意味合いの “Hasta la vista” が、『ターミネーター2』以降、暴力や破壊、あるいは相手を見下すような、より強い意味合いを持つようになったことは興味深い点です。
映画のスペイン語版では、このフレーズは “Sayonara, baby” と吹き替えられています。
これは、スペイン語話者の観客にオリジナルの「また会う日まで」という意味合いと異なる印象を与えないようにするための配慮と考えられます。
類似表現
スペイン語の別れの挨拶
スペイン語には、”Hasta la vista” の他にも様々な別れの挨拶があります。
表現 | 意味 | 説明 |
---|---|---|
Chao(チャオ) | さようなら | イタリア語と共通の表現。軽い別れの挨拶。 |
Hasta pronto(アスタ プロント) | また後でね | すぐ会う予定の人に使う。 |
Hasta luego(アスタ ルエゴ) | じゃあね | “Chao” よりも丁寧な表現。 |
Hasta mañana(アスタ マニャーナ) | また明日 | 明日会う予定の人に使う。 |
Nos vemos(ノス ベーモス) | また会いましょう | 次に会う予定は決まっていないが、また会いたいという気持ちを表す。 |
Adiós(アディオス) | さようなら | 英語の “Goodbye” に相当する。 |
ターミネーターシリーズの関連フレーズ
“Hasta la vista, baby” と並んで有名なのが、 “I’ll be back” というフレーズです。
主人公のターミネーターが、警察署でサラ・コナーの友人を装って受付に現れた際に、受付の警官に待機するように指示された時に言い放ったセリフです。そして、この言葉通りターミネーターは警察署に戻ってきます。
また、 “I’ll be back” に対する返答として “I’m back” というフレーズも存在します。
使用上の注意点
“Hasta la vista, baby” は、カジュアルな表現であるため、目上の人やフォーマルな場では使用を避けるべきです。
また、”baby” を加えることで、相手によっては失礼な印象を与えてしまう可能性もあります。状況に応じて使い分けることが重要です。
結論
“Hasta la vista, baby” は、映画『ターミネーター2』で有名になったスペイン語の別れの挨拶です。
もともとは「また会う日まで」という意味でしたが、映画の影響で、相手を打ち負かす、あるいは見下すようなニュアンスを含むようにもなりました。
カジュアルな表現であり、親しい間柄の人に対して使うのが適切です。状況によっては失礼な印象を与えてしまう可能性もあるため、使用には注意が必要です。
“Hasta la vista, baby” は、映画の名セリフとして、またポップカルチャーの象徴として、今後も様々な形で使われていくと考えられます。