地震大国である日本では、いつどこで地震が発生してもおかしくありません。
地震による被害を最小限に抑えるためには、日頃からの備えが重要です。
この記事では、「地震対策」という用語について、その定義から具体的な対策、そして最新の動向まで詳しく解説していきます。
地震対策とは
地震対策とは、地震の発生による被害を軽減するために行う、あらゆる準備と行動を指します。
地震はいつ、どこで、どれくらいの規模で発生するかを予測することが非常に難しく、ひとたび発生すれば、人命や財産に甚大な被害をもたらす可能性があります。
したがって、地震が発生した場合にも被害を最小限に抑え、可能な限り速やかに日常生活を回復できるよう、日頃から「防災」と「減災」の観点から対策を講じておくことが重要です。
緊急地震速報を見聞きしたり、地震の揺れを感じたりした際には、まず、あわてずに身の安全を確保することが大切です。 具体的には、頭部を保護し、家具など転倒しやすい物の近くから離れる、落下物から身を守るなどして、安全な空間に移動することが重要です。
地震対策の種類
地震対策は、大きく分けて以下の3つの種類に分類できます。
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家具の固定
地震が発生すると、家具が転倒・落下し、怪我をしたり、避難の妨げになったりする危険性があります。
家具の固定は、地震対策の基本と言えるでしょう。
具体的な固定方法としては、L字金具や転倒防止ベルトなどを使用して、家具を壁や床に固定することが挙げられます。
特に、寝室や子供部屋など、人が長時間過ごす部屋では、家具の固定を徹底する必要があります。
冷蔵庫などの大型家電は、転倒すると大きな被害をもたらす可能性があるため、転倒防止用のベルトやチェーンなどで壁に固定するなどして、しっかりと固定しましょう。
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建物の耐震補強
建物の耐震性は、地震に対する強さを示す指標です。 古い建物は、耐震基準を満たしていない場合があり、耐震補強工事が必要となることがあります。
耐震補強には、壁の量を増やす、柱や梁を強化する、基礎を補強するなどの方法があります。 耐震補強を行うことで、建物の倒壊を防ぎ、人命を守ることができます。耐震補強には、「耐震」「免震」「制震」の3つの構造があります。
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耐震構造
柱や壁を強化し、建物全体で地震の揺れに対応する構造です。
壁の量や配置のバランスが重要で、耐力壁と呼ばれる壁をバランスよく配置することで、地震に強い家を作ることができます。
住宅の耐震性を示す指標として「直下率」があり、「柱直下率」と「壁直下率」の2種類があります。
これは、1階と2階で繋がっている柱や壁が家全体の何割になるかを表した数値で、柱直下率は50%以上、壁直下率は60%以上であることが望ましいとされています。 -
免震構造
建物と基礎の間に水平方向に自由に動く「積層ゴム」などの免震装置を設置することで、地盤の揺れを建物に伝わりにくくする構造です。
地震のエネルギーを建物に直接伝えないため、建物の揺れを大幅に軽減することができます。 -
制震構造
建物の中に「ダンパー」と呼ばれるエネルギー吸収装置を設置することで、建物本体に伝わった揺れのエネルギーを吸収し、揺れを小さくする構造です。
超高層ビルなどで採用されることが多く、地震だけでなく、台風などの強風にも効果があります。
耐震補強は、建物の安全性を高める上で重要な対策ですが、「耐震補強は意味がない」と考える人もいます。
その理由としては、耐震補強の効果が目に見えにくいことや、災害対策への意識が低いことなどが挙げられます。
しかし、耐震補強は、地震による建物の損傷や倒壊のリスクを軽減し、人命を守る上で非常に重要な役割を果たします。
また、耐震補強済みの住宅は、資産価値が高くなる傾向があり、将来的に売却する際にも有利になることがあります。
さらに、多くの自治体では、耐震補強工事に対して補助金制度を設けているため、費用面での負担を軽減できる可能性があります。
耐震補強の方法としては、従来の方法に加えて、近年では「ジオH工法」のような新しい工法も開発されています。
これは、床や天井を壊さずに家の耐震性を向上させる工法で、従来の耐震補強に比べて低コストかつ短工期で施工できるというメリットがあります。 -
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防災グッズの準備
災害時に必要な物資を備えておくことは、地震対策として非常に重要です。 食料や水、懐中電灯、ラジオ、救急セットなど、最低限必要なものを揃えておきましょう。 これらの防災グッズは、リュックサックなどに入れて、すぐに持ち出せる場所に保管しておくことが大切です。
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地震発生時の行動
地震が発生したときは、まず身の安全を確保することが最優先です。
- 屋内にいる場合
椅子やテーブルなどの下に隠れて頭部を保護しましょう。
棚や窓ガラスなど、倒れたり落下したりする物の近くからは離れましょう。 また、揺れがおさまったら、ドアなどを開けて避難口を確保しましょう。
これは、余震によって建物が歪み、ドアが開かなくなることを防ぐためです。 火災の発生を防ぐため、地震発生時に火を使っている場合は、可能な範囲で消火しましょう。 - 屋外にいる場合
ブロック塀や電柱など、倒れてくる可能性のあるものから離れましょう。
建物から離れて、安全な広い場所に避難しましょう。 - 海岸に近い場所にいる場合
揺れがおさまったら、すぐに高台や5階建て以上の高い建物に避難しましょう。
津波は、地震発生後、数分以内におそってくる可能性があります。
地域に特有な地震対策
場所によっては、特に地震災害に対して備えておかなければならないことがあります。
例えば、海岸に近い場所に住んでいる場合は、地震が発生したらすぐに逃げられるような準備をしておく必要があります。
避難時には、靴を履き、ガラスの破片などを踏まないように注意しましょう。
また、軍手や手袋を着用すると、より安全に避難できます。
職場における地震対策
オフィスなど、職場における地震対策も重要です。 オフィス家具や家電製品の転倒・落下・移動防止対策を講じることはもちろん、地震発生時の避難経路の確保、従業員への防災教育なども必要です。
オフィス家具の転倒防止対策については、東京消防庁の「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」などが参考になります。
JOIFAは、地震対策を含め、オフィスにおける様々な問題を解決できるスキルを持った人材を育成することを目的とした、認定オフィス管理士(COMJ)制度を設けています。
また、東京消防庁と連携し、オフィスにおける災害の軽減化に向けた共同研究や意見交換なども行っています。
災害救助における組織の役割
地震などの大規模災害が発生した場合、行政機関だけでなく、様々な組織が災害救助活動を行います。
その中でも、日本赤十字社は、国内外で災害救護活動を行う代表的な組織です。 日本赤十字社は、災害発生時に、医療救護班の派遣、避難所の運営、救援物資の配布など様々な活動を行っています。
最新の地震対策
近年、地震対策に関する情報や技術は日々進化しています。
政府機関や専門機関のウェブサイトでは、最新の地震対策情報が公開されています。
例えば、内閣府防災情報のページでは、地震発生時の行動や防災グッズの準備など、具体的な対策方法が紹介されています。
また、防災科学技術研究所では、地震ハザードステーションJ-SHIS を通じて、地震発生確率や地震による揺れの強さなどの情報を提供しています。
近年では、ソーシャルメディアなども活用され、災害時に迅速な情報収集や情報共有が可能になっています。
地震対策の重要性
地震対策の重要性を理解するために、過去の地震被害を振り返ってみましょう。
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阪神・淡路大震災(1995年)
死者6,434名、負傷者43,792名、全壊家屋約10万5,000棟という甚大な被害が発生しました。
建物の倒壊による圧死や窒息死が多かったことから、建物の耐震化や家具の固定の重要性が改めて認識されました。
この地震では、交通網の寸断、ライフラインの停止、経済活動の停滞など、都市機能に大きな影響が出ました。
また、被災者への精神的な影響も大きく、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しむ人も少なくありませんでした。 -
東日本大震災(2011年
死者19,747人、行方不明者2,556人、住家被害1,154,893棟という未曾有の被害が発生しました。
地震による津波被害が甚大であったことから、津波避難の重要性、防災意識の向上が課題として挙げられました。
この地震では、農林水産業にも大きな被害があり、農地や漁船、漁港などが壊滅的な被害を受けました。
また、原発事故による放射能汚染の影響も深刻で、避難生活の長期化という問題も発生しました。 -
熊本地震(2016年)
死者211名、建物被害約21万棟という被害が発生しました。
2度の震度7の地震が発生し、家屋の倒壊や土砂災害による被害が多かったことから、建物の耐震化や地域防災の重要性が再認識されました。
この地震では、熊本城などの歴史的建造物も大きな被害を受けました。
また、家屋の倒壊などにより、大量の災害廃棄物が発生し、その処理が課題となりました。
これらの地震被害から、地震対策は人命や財産を守る上で不可欠であることがわかります。
防災対策の三本柱:自助、共助、公助
地震などの災害から身を守るためには、「自助」「共助」「公助」の3つの取り組みが重要です。
- 自助
自分で自分の身を守る努力のことです。 家具の固定や防災グッズの準備、避難経路の確認など、日頃からの備えが重要になります。 - 共助
地域住民が協力し合い、助け合うことです。 自主防災組織の活動や、地域住民同士の協力体制の構築などが挙げられます。 - 公助
国や地方公共団体による支援のことです。 避難所の開設や救援物資の配布、ライフラインの復旧など、行政による支援が期待されます。
家庭や地域でできる地震対策
地震対策は、国や自治体だけでなく、個々の家庭や地域でも積極的に取り組む必要があります。
- 家庭でできる地震対策
家具の固定、防災グッズの準備、避難経路の確認、家族での話し合いなどが挙げられます。 家具の固定には、L字金具や転倒防止ベルトなど、様々なグッズが販売されているため、状況に合わせて適切なものを選びましょう。
また、防災グッズは、家族構成や住んでいる地域に合わせて、必要なものを揃えましょう。
避難経路や避難場所を家族で共有し、地震発生時の行動をシミュレーションしておくことも重要です。
地震発生による停電に備え、懐中電灯や携帯ラジオなどの用意のほか、太陽光発電システムや蓄電池の導入を検討するのも良いでしょう。
また、家具の転倒防止対策や防災グッズの内容など、定期的に地震対策を見直すことも重要です。
- 地域でできる地震対策
地域の防災訓練への参加、自主防災組織の結成、避難場所の整備などが挙げられます。
地域住民が協力し合い、防災意識を高めることで、地震による被害を軽減することができます。
まとめ
地震対策は、地震による被害を軽減し、人命や財産を守る上で非常に重要です。
家具の固定、建物の耐震補強、防災グッズの準備、地震発生時の行動、地域防災など、様々な対策を総合的に行う必要があります。
また、最新の地震対策情報にも目を向け、日頃から地震への備えを万全にしておくことが大切です。
地震対策は、一つひとつの対策が独立しているのではなく、それぞれが相互に関連し合い、効果を高め合っています。
日頃から防災意識を持ち、家庭や地域でできることから地震対策に取り組んでいきましょう。